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東京高等裁判所 昭和48年(行コ)11号 判決 1974年6月27日

東京都足立区六月一丁目一三番一三号

控訴人

瀬戸千代司

右訴訟代理人弁護士

前田斉

東京都足立区千住旭町五二番地

被控訴人

足立税務署長

右指定代理人

房村精一

田井幸男

磯喜義

中川和夫

右当事者間の所得税更正決定処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和四一年四月二〇日付でした控訴人の同三八年度分所得税にかかる総所得金額を金三五三万一五七〇円とする更正処分のうち金一一五万二〇〇〇円を超える部分を取消す。

被控訴人が昭和四一年四月二〇日付でした控訴人の同三九年度分所得税にかかる総所得金額を金九三五万七〇五円とする更正処分のうち金一七七万四二七二円を超える部分を取消す。訴訟費用は一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴指定代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上及び法律上の主張並びに証拠の関係は、控訴代理人において当審における控訴本人尋問の結果を援用し、乙第二五号証の成立は知らないと述べ、被控訴指定代理人において乙第二五号証を提出したほかは原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

理由

一、当裁判所は、当審における証拠調の結果を参酌し、さらに検討した結果、被控訴人が控訴人に対してした本件各所得税更正決定処分はいずれも適法と判断するものであり、その理由は、原判決一五枚目裏末行から一六枚目表四行目にかけて「原告本人尋問の結果中には・・・・措信することができない。」とある部分を次のとおり改めるほか原判決の理由説示と同一であることからこれを引用する。

「原審における控訴本人尋問の結果中にはほぼ右主張にそう供述があり、また当審における同結果中には、金七〇〇万円の銀行預金については無記名であるため預金証明書の交付を断わられた旨、金六〇〇万円の借入金については訴外細井貫一から昭和三九年末ごろから翌同四〇年にかけて何回かに分けて右合計金を借受けた旨の各供述部分があるけれども、控訴人の右主張が真実であるならば右預金及び借入れの事実、又は少くともその間接事実は、文書又は証人による立証が容易であると考えられるのにこれらを認めるに足りる証拠はついに何ら提出されなかつたこと、当審における控訴本人尋問の結果によると本件更正所得税額は当時としても決して少額といえない額であるのに税務職員の調査を受けた際にも全く右事実の存在を申し出ていないことが認められること、なかんずく訴外細井なる者から金六〇〇万円を借受けたとの控訴本人の供述は当審においてはじめて現われたものであること、さらに原審及び当審における控訴本人の右借入額、借入回数をはじめその返済の時期及び金額等についての供述は不明確なところが多くて具体性に欠けること等を総合すると、右預金及び借入れに関する前掲供述部分をにわかに措信することはできず、他にこれを認めるに足りる証拠は全く存しない。」

二、よつて、右と同旨で控訴人の請求を棄却した原判決は正当であり、本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三八四条第一項によりこれを棄却し、訴訟費用の負担につき同法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 杉山孝 裁判官 古川純一 裁判官 岩佐善已)

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